アンカー引張試験とは
あと施工アンカーに関する検査には、「自主検査」と「立会い検査」がある。「自主検査」は、あと施工アンカー現場責任者があと施工アンカー施工者と共に行う検査であり、必要に応じて監理者や施工責任者が立ち会う場合もある。従って、立会い検査の時期に応じて自主検査を行い、非破壊引張試験が行われることもある。
自主検査
- (1)
- あと施工アンカー施工現場責任者は、1ロットの工事施工終了後に、あと施工アンカー施工者と共に、アンカーが施工計画書通りに施工されていることを自主検査する。
- (2)
- 自主検査においては、あと施工アンカー全数を対象とし目視検査と接触打音検査を行い、適宜、計測検査を行い、必要に応じて非破壊引張試験を行う。
- (3)
- 自主検査で不具合が発見された場合には、施工者は不具合の状態を確認し、現場責任者と協議して措置を決める。
●自主検査の時期 施工確認のための自主検査は、一般には相当数のあと施工アンカーの施工終了後に、1ロット毎に行うか、工事完了後に行う。検査回数の単位となる1ロットは、アンカー種類、径、施工本数、施工場所(同一場所、複数場所)、施工向き、施工時間(1日、複数日)、施工者(1班、複数班)等を総合的に判断して、現場責任者は、施工責任者や施工者とも相談して決定する。
●自主検査項目 自主検査方法には、目視検査、接触打音検査および計測検査があり、必要に応じて行われる非破壊引張試験がある。自主検査で、管理者が実施する立会い検査に先立って、非破壊引張試験を行う場合は、立会い検査に準拠して行う。なお、非破壊試験において、せん断試験を現場で行うこともありうるが、極端にへりあきが無い場合を除いて、せん断特性も引張試験結果を代表特性として判別できるので、一般に引張試験が実施される。
金属系アンカーの自主検査項目、判定基準および確認方法
※表部分は横にスクロールしてご覧ください
検査項目 | 検査時期 | 判定基準 | 確認方法 | 検査数 |
---|---|---|---|---|
目視検査 | 1ロット毎または当日の施工終了後または工事完了後 | アンカー種類、径、施工位置、本数、角度、出寸法または入寸法が、施工計画書および施工確認シートと合致すること |
・母材からの出寸法(出代;おねじタイプ)または入寸法(入り代;めねじタイプ)が確保されていること ・アンカー本数が確保されていること ・アンカーの種類、径、施工位置、角度(おねじタイプ)に異常がないこと |
全数 |
接触打音検査 (おねじタイプ) |
・ガタツキがないこと ・特異音がなく、適度の反発と反発音があること |
・手で触れて動かしても、動かないこと ・ハンマー等を用いて軽くたたき、異常な反発と反発音がないこと |
||
計測検査 | ・アンカー径、施工位置、角度、出寸法または入寸法が、施工計画書および施工確認シートと合致すること | 計測器などを用いて計測し、施工計画書(設計図)および施工確認シートと照合すること | 適宜 | |
非破壊検査 | 1ロット毎 (または工事完了後) |
・引張試験で過大な抜け出しが無く、所定の強度を有すること | (本数や回数は、立会い検査に準じる) | 必要に応じて |
●補足
- ・打込み方式のうち拡張子打込み型(芯棒打込み式、内部コーン打込み式)の場合には、拡張子が所定の位置まで打ち込まれていることを目視によって確認する。また、拡張部打込み型(本体打込み式、スリーブ打込み式)の場合には、アンカーが孔底にまで到達しているか否かを施工したアンカーを専用打込み工具を用いて叩き、その手応えと音によって確認を行う。
- ・締付け方式の場合には、締付けトルク値が指定されていれば、その値を確認する。なお、締め付けたトルク値は、ねじ部や接触部のなじみ等により、締付け当初よりもトルク値が時間の経過とともに減少し、しばらくして落ち着く傾向があるのでトルクレンチによる確認検査は、このことを考慮して行う。
接着系/カプセル方式アンカーの自主検査項目、判定基準および確認方法
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検査項目 | 検査時期 | 判定基準 | 確認方法 | 検査数 |
---|---|---|---|---|
目視検査 | 硬化養生後において、1ロット毎または工事完了後 |
・接着剤が母材表面に達していること ・アンカー種類、径、施工位置、本数、角度、出寸法(埋込み寸法)が、施工計画書および施工確認シートと合致すること |
・接着剤が施工面まで充填されていること ・アンカー筋のマーキングが施工面に達していること ・母材からの出寸法(出代)が確保されていること ・アンカー本数が確保されていること ・アンカーの種類、径、施工位置、角度に異常がないこと |
全数 |
接触打音検査 |
・ガタツキがないこと ・特異音がなく、適度の反発と反発音があること |
・手で触れて動かしても、接着剤が硬化しており、動かないこと ・ハンマー等を用いて軽くたたき、異常な反発と反発音がないこと |
||
計測検査 | ・アンカー径、施工位置、角度、出寸法が、施工計画書および施工確認シートと合致すること | ・計測器などを用いて計測し、施工計画書(設計図)および施工確認シートと照合すること | 適宜 | |
非破壊検査 | 1ロット毎 (または工事完了後) |
・引張試験で過大な抜け出しが無く、所定の強度を有すること | (本数や回数は、立会い検査に準じる) | 必要に応じて |
立会い検査
- (1)
- 管理者は、あと施工アンカーの性能確認のために立会い検査を行う。
- (2)
- 立会い検査の試験方法、検査時期、試験数および合否判定基準は、特記仕様書または監理者の指示による。特記仕様書の記載または監理者の指示がない場合、試験方法は非破壊引張試験とし、検査時期、試験数および合否判定基準は監理者と協議のうえ管理者がこれを定める。
- (3)
- 試験は、原則としてあと施工アンカー主任技士またはあと施工アンカー技術管理士、第1種あと施工アンカー施工士の資格を有する第三者が実施する。
- (4)
- 不合格が生じた場合は、監理者と協議の上、対処措置を行う。
●非破壊引張試験 監理者は、性能確認検査として非破壊引張試験を行い、予め定められた検査荷重まで加力し、抜け出しがないことを確認する。検査荷重および検査数は監理者の指示または承認による。
立会い検査(非破壊検査)と判定基準の例
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検査・試験法(検査荷重例) | 判定基準 | 検査回数と検査数の例 |
---|---|---|
非破壊検査(非破壊引張試験) 検査荷重例;許容引張荷重または終局引張荷重の2/3まで加力 |
検査荷重まで急激な抜け出し等の過大な変位がないこと | 1ロット※1毎に3本以上 |
※1 管理者は、監理者や施工責任者とも相談して試験回数(1ロット)を決定する。
一般には、加力は許容引張荷重または設計荷重、耐震補強工事の場合には予想破壊荷重(終局引張荷重)の2/3を検査荷重とし、この荷重に対してアンカーの急激な抜け出しやコンクリート表面のひび割れが生じない場合を合格とする。また、非破壊引張試験の試験数は3本以上とする。
引張試験用の試験装置には、油圧ジャッキを用いてアンカーに直接引張力を加えるタイプ(油圧式)とアンカーのねじ部にナットを嵌め、ナットを回転させてアンカーに引張力を生じさせるタイプ(レンチ式)の二つのタイプが一般的に用いられているが、いずれも定期的に校正された測定を使用する。
検査回数(1ロット)と検査数
管理者は、立会い検査の回数(1ロット)と時期について、監理者や施工責任者とも協議して決定する。検査回数の単位となる1ロットは、アンカー種類、径、施工本数、施工場所(同一場所、複数場所)、施工向き、施工時間(1日、複数日)および施工者(1班、複数班)等が関係してくる。また、検査本数は、構造物の重要度や工事内容によっても変わってくる。
- 例1)
- 同一施工条件(同種類、同径、同施工場所、同施工者)ごと
- 例2)
- 同一施工条件で施工本数が300本以下ごと
- 例3)
- 1日に施工された同種の径ごと
- 例4)
- 施工向きごと
不合格が生じた場合、管理者は、その原因特定と再発防止対策について施工責任者と協議するとともに、必要に応じて追加の検査を実施する等を行い、ロットの受入れ方針を総合的に判定する。さらに、判定した受入れ方針について、監理者と協議し、承認を得て、ロットを受け入れる。また、不合格となったアンカーは、監理者の承認のもとに補修する。一般的には、アンカーを切断して除去したうえで抜け出した箇所の補修工事を施してアンカーを再施工する。
●不合格時の追加検査例
- 例1)
- 不合格になったロットの20%を抜き取りして検査を行う。さらに、不合格が生じた場合は残り全数の検査を行う。
- 例2)
- 不合格になったロットの残り全数の検査を行う。
- 例3)
- 同日に施工した残り全数の検査を行う。
- 例4)
- 接着系アンカーで、鉄骨ブレース増設や増し打ち壁などの耐震補強の場合は、1構面全数の検査を行う。
抜粋:一般社団法人 日本建築あと施工アンカー協会 あと施工アンカー施工指針(案)
試験機例
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油圧式加圧装置(アナログ表記)
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油圧式加圧装置(デジタル表記)
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油圧式加圧装置(デジタル表記)
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レンチ式加圧装置(デジタル表記)
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レンチ式加圧装置(デジタル表記)
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レンチ式加圧装置(デジタル表記)